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【Cチーム関連情報】2024.7.28坂戸育成カップ
2024-08-01 18:30:58
大宮西サッカースポーツ少年団

2024年7月28日。本拠地のさいたま市では、夏の風物詩である大和田の花火大会が催される。太陽もこの一大イベントを盛り上げるためか、ぐんぐん高度とともに、気温を上げていく。そんな炎天下の中、大宮西サッカースポーツ少年団Cチームヘッドコーチ田中久則は、遠路はるばる坂戸市民総合運動公園へ選手たちを連れてきた。Cチームのヘッドコーチを務めて1年と4ヶ月。初のタイトルがかかるカップ戦だ。

小一時間の車移動を終え、ピッチに向かう選手たちが足をとめる。ピッチ上のいたるところから、無数の白い火花のようなものが立ちのぼっている。

ここは、大和田か⁇否。これは大変珍しい、ピッチから噴出されるミストであった。坂戸市はスポーツにお金をかけているようである。なんと素晴らしい。この恵まれた環境の中、4チームでのしのぎを削り合う、熾烈な戦いが始まった。



ー 第1試合 vs宮前 ー


「ゴー!!」

田中の指示で、赤の軍団が相手陣地へと流れ込む。FW和空が果敢にボールを獲りにいく。

前半2分。DFもラインを高く設定し、相手のクリアを回収したRSB葉瑠がターンで相手をかわし、シュート。ここは相手GKが横っとびでファインセーブ。早くもチャンスをつくっていく。

CB悠真もCH圭佑、RSH翔斗と細かいパスをつなぎ、相手ゴールに攻めかかる。

前半5分。ゴール前の混戦の中、またも圭佑から翔斗への短い横パスが通り、大宮西が先制点を獲得する。

その後も翔斗に代わって投入された恭平がハイプレスをかけ、再三チャンスを作る。

すると前半7分、2年生に負けじと3年生LSH裕翔が圭佑とのワンツーからサイドをえぐり、追加点をあげることに成功する。

「上がるの⁉︎下がるの⁉︎どっち⁉︎」

2点をリードし、守備の意識が強くなるDF陣に田中の檄が飛ぶ。簡単には答えを教えない田中の指導スタイルは練習でも試合でも変わらない。

このタイミングで得点者裕翔をベンチに下げ、期待の新星遼を投入する。

その後もハイプレスを続ける大宮西は、和空の技ありパスや圭佑のワンタッチパスなど、見事なパスワークを見せるも、前半は2-0で折り返す。


後半、田中が動く。FW和空に代え、3年生雅斗をピッチに送る。相手DFラインに積極的なプレスをかけ、ボールを奪いに行く。LSH遼も体をうまく使ってボールをキープしながら前へと運ぶ。

しかし、この後だんだんと宮前が流れをつかみ始める。

後半2分。相手ドリブラーに最終ラインまでボールを運ばれるも、ここはLSB洸がうまく体を入れかえボールを奪取する。

その直後、前から奪いにいくDFラインの隙に、見事な相手のスルーパスが通り、失点を許してしまう。

後半4分。圭佑が浮いたこぼれ球に反応し、ダイレクトでスーパーミドルシュートを放った。これは惜しくもキーパーに弾かれるがコーナーキックをゲットする。

しかし、このコーナーキックを跳ね返されると、相手選手が3枚駆け上がっていくのに対し、大宮西のDFは洸しか残っていない。これを落ち着いて決められ、同点ゴールを許してしまう。

完全にペースを乱した大宮西はその後もピンチが続く。後半6分にも裏をつかれ、スピードでゴールに迫られるも、葉瑠が決死のファールでこれを防ぐ。後半9分にはスローインからゴール前までボールを送られ、GKとの1対1の状況をつくってしまう。大逆転を許したかに思われたが、守護神楓馬が体を張ってチームを救った。

試合終了間際、スーパープレーが炸裂する。GK楓馬が高く蹴り上げたボールを翔斗が神のクッショントラップで1枚はがす。トラップ際に詰めてきた2枚目をアウトタッチでさばき、カットイン。そのまま、ゴールまで迫る勢いであったが、相手の必死のクリアでコーナーキックとなる。

自称セクシーフットボーラー田中に笑みがこぼれ、「やらしいねぇ」と唸る。

このプレーで流れをもう一度取り戻し、攻め続ける大宮西。後半途中からピッチに戻った和空が華麗な胸トラから中央突破を狙うも相手のファールにあう。圭佑がFKを蹴るも相手の壁に弾かれ、ここで試合終了。

トータルスコアは2-2。初戦は引き分けという結果となった。



ー 第2試合 vs坂戸FC ー


田中はGKに裕翔、RSHに楓馬を指名し、選手を送り出した。

前半開始早々、自陣ペナルティエリア付近でFKを与えてしまう。

強烈なシュートが飛ぶが、これは危うくゴール上へと流れていく。GK裕翔はガッツポーズで喜びを表現する。

その後、一進一退の展開が続く。

田中もテクニカルエリアぎりぎりで戦況を見つめる。足元からはミストが噴き出ている‥ふ、まさかな‥

フィールドプレイヤーで出場した楓馬は守備に献身的だ。DF最終ラインまで下がってピンチを凌ぐ。

前半5分、相手コーナーキックをクリアしたボールをCH圭佑が収め、前線に長いスルーパスを通す。これを受けたFW和空がGKとの1対1を制し、先制に成功する。

このプレーに田中は「スペースを見よう」と涼しげな顔で声を掛ける。足元にはやはりミスト。風向きに合わせて微妙にポジショニングを調整している。疑惑が確信へと変わった。さすがの田中も、この暑さに応え、狡猾にミストで涼をとっていた。

流れを引き寄せた大宮西は、ペナルティエリア付近から恭平がシュートを放つなど、その後も攻め続けるが追加点とはならず、前半を1-0で折り返した。


後半は左サイドからの展開が冴え渡る。LSB洸が縦に運び、CH圭佑がシュートを放つ。LSH翔斗も上手く体を使ってボールを奪取し、相手ゴールに攻めかかる。

ここで、ベンチが動く。FW和空に代えて雅斗を投入する。Cチームは試合経験が少なく、選手交代は長年コーチを務める佐藤コーチが付き添う。早朝涼しい時間に愛車を磨く佐藤コーチにとって、日中のこの暑さはキツそうだ。

攻めの時間が続く中、集中を切らさなかったのは三橋小トリオのDF陣だ。常にラインコントロールをして、安定したゲーム展開を続けている。裏をとられる場面でも、CB悠真が体を入れてGK裕翔にキャッチさせる。

こうした一つ一つの頭脳プレーに、田中の考えさせる指導の成果が光る。

後半5分、混戦から翔斗がシュートをするも、これは相手GKにキャッチされてしまう。この後、奇跡が起きる。GKが蹴り出したボールを、圭佑と翔斗の植水コンビがダイレクトツインシュート。

低く鋭い軌道の強烈なボールはGKの手を弾き、ゴール右隅に突き刺さり追加点に成功する。

さらに前がかりになる大宮西だが、終了間際カウンターのピンチを招く。ここは悠真がじっくりと対応し、ボールを奪ってセーフティクリアをする。

DF出身の田中は「1点獲ったのと同じだ」と、このプレーを大きく評価する。

ピンチを凌いだ大宮西は、コーナーキックに合わせた遼のシュートや、雅斗の落としに反応した翔斗のシュートなど、攻め続けるが得点には至らない。

攻撃陣の積極的なプレーとDF陣の無失点に抑える活躍があり、トータルスコア2-0で第2試合は終了した。



ー 第3試合 vs川越ひまわり ー


いよいよ、運命の第3試合。第1試合で引き分けた宮前が第2試合も引き分けたため、この試合に勝てば優勝が確定する。負けられない戦いが始まった。

開始早々、相手が中央を運んできたボールをCB悠真がクリアするも、相手に当たって跳ね返り、いきなりのピンチを迎える。しかし、さすがは大宮西の大黒柱悠真。相手を上回るスピードで追い越しクリアに成功する。

そのまま前半は守りの時間が続く。自陣内でプレーする時間が長くなる。LSHの恭平も最終ラインまで戻って守備に徹する。

しかし、先の2試合を通して、DFラインがメキメキと成長していた。コンパクトな守備により、チャレンジ&カバーを徹底し、相手にシュートを許さない。裏に抜け出たボールにもLSB洸が並走してしっかりと対応する。

コーナーキックからファーサイド隅にシュートを打たれるも、GK楓馬が横っとびのスーパーセーブ。

3年生守備陣が鉄壁の守りで前半を無失点に抑え、スコアレスで後半につないだ。


後半もDF陣が集中を切らさない。RSB葉瑠も体を張ってボールを奪取し、前線へとボールを送る。

後半3分、攻撃陣がこの頑張りに応える。CH圭佑が相手ゴール前で翔斗に横パスを入れる。相手が慌てて詰める中打ったシュートは惜しくもバーに弾かれ、クリアされてしまう。しかし、これを機に大宮西が流れを引き寄せる。横パスや下へのパスが増え、相手ゴールが近づいてきた。しかし、なかなか得点につながらない。

後半9分、いつ笛が鳴ってもおかしくない。相手のスローインを洸がゴール前に大きく跳ね返す。GKにキャッチされれば、大きく蹴り出されて試合終了は濃厚。全員の足が止まりかける中、一人だけ静かに目を光らせている翔斗がいた。猛然とボールに近づいていく。相手選手を2人、3人と追い越していく様は、まるで一人早送りだ。とうとうボールに追いついた翔斗の前にGKが立ち塞がる。翔斗に迷いはない。宙に止まっているかに見えるボールに向かって思い切って右足を振り抜く。なんとこのシュートに相手GKが反応する。 

が、ボールは伸ばされた手のわずか上を抜け、ゴールネットに突き刺さった。値千金の勝ち越しゴールだ。今日一番の歓声が沸いた。

その直後、試合終了を告げるホイッスルが鳴り響いた。1-0で大宮西が勝利した。


2勝1分、勝ち点7、得失点差は+3。一試合毎に選手たちは、気付き、考え、プレーで表現し、大きな成長を見せ、素晴らしい成績で優勝を手にした。

優秀選手には、フル出場で攻守のバランスをとり、チャンスを作り続けた洸が選ばれた。来たるガスワンカップに向けて、このまま突き進んでもらいたい。メインでの指導を初めて2シーズン目となる田中にとっても初のタイトルとなった。今日この日、白昼の坂戸の空に喜びという名の大輪の花火が打ち上がった。


今回ご招待いただいた坂戸FCさん、対戦していただいたチームの皆様、暑い中公平にジャッジをしてくださった方々、選手を熱心に指導してくださったコーチの皆様、応援してくださった皆様、貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。


‥‥


その夜、田中は南銀に姿を現した。沖縄から迎えている志真志FCとの交流会に出席するためである。今晩の田中はいつにも増して上機嫌だ。


スタッフは田中にある質問をした

ーなぜ無償にも関わらず、休日を献上してコーチをしているのか?ー

「指導者としての究極の目標は、子どもたちが大人になってもサッカーを続けていること」


卒団後に時を経て指導者として大宮西少年団へ戻ってきたこーへーコーチの横で、田中は笑みを浮かべながらそう答えると、渇いた喉にビールを流しこんだ

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